バブル景気の崩壊後、不況が続く中で、これまでの日本の一億総サラリーマン時代を築き上げた年功序列や終身雇用制を維持出来なくなり、リストラや倒産の嵐が吹き荒れました。そして20年の失われた時代を経て、最近では手に職をつけられる専門学校や就職に強い大学が人気を集めており、その一方で起業を思い立つ学生や社会人も増えています。つまり一つの会社に定年退職に至るまで勤め上げるというキャリアを想定しない人が増えているのであり、特にITエンジニアなど労働市場において比較的流動性の高い職種であれば、誰もが起業する可能性を秘めています。
これは特に現在のネットワーク環境が整備されて、個人事業主2.0といわれる新しい個人事業主の出現によっても裏付けられています。この個人事業主2.0は、クラウドサービスなどを駆使して、機動力に優れて柔軟にクライアントに対応しつつ、IT投資に熱心な諸企業にも劣らぬ経営環境を、低コストながら実現している個人事業主であり、その活躍が注目されています。このようなスタイルは、女性が結婚や出産を経てぶつかる壁を、上手く迂回する上でも非常に役立つものであり、現実に女性エンジニアがフリーランスになる数も増えています。
というのも会社勤めの身であれば、いくら実力のあるエンジニアといえど、多くの場合にはプロジェクトごとにチームで参加するのであり、その中で仕事量を調節したり一人だけ残業や出張を免除してもらったりということは、現実問題とても難しいものです。仮に育児休暇を取得出来ても、その後の現場復帰において、思い切って負担の軽い仕事に回されるか、あるいは復帰前と同じ環境に戻されるか、というようにあまり選択の余地がなさそうです。その点フリーランスであれば、すべては自己責任になりますが、自分に可能なプロジェクトを選んでその仕事を完成させれば良いのであり、クライアントとの調整さえ出来れば仕事を継続することが出来ます。
女性に限らず男性であっても、フリーランスになる理由には、今の会社に勤めていても給料が上がらないといった収入面での不満や、あるいは今の会社に勤めていてもやりたい仕事が出来ずキャリアアップ出来ないといったキャリア面での不満が挙げられています。確かに企業によってはエンジニアに求める仕事はある程度限られており、その中から自分の希望に沿う要素を見出すのが難しい場合もあるかもしれません。またIT投資を考えるクライアントもエンジニア側からの提案の出来不出来をシビアに評価している時代であり、収入面も一定の年齢になれば頭打ちになってしまうようです。このような理由からフリーランスを選ぶのであれば、会社を離れて実力でクライアントから選ばれるだけの、スキルや知識が不可欠です。